2月5日、第62回東京都市議会議員研修会に出席しました。
毎年この時期に、東京都市議会議長会主催により、府中の森芸術劇場で開催されます。
雪の降る中、府中市へ。

今回は、法政大学総長 法学部教授 廣瀬克哉氏による「今後の自治体の課題と議会に期待される役割」についてでした。
演題は、昨今よくいわれている一般的なものでありますが、具体的な事例を交えた、腑に落ちること満載のお話で、1時間30分弱があっという間でありました。

講演の趣旨を、メモとスライドの写真と記憶をもとに、3点に整理してみました。
① 自治体議会を、居心地は悪いが、ローカルな情報環境・コミュニケーションの場に。
②2020年1月から始まった東京都での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行から4年、今がポストコロナの振り返りをする最後の時期である。
③アウトリーチ型の議会、情報発信を。
以下は講演の全てではありませんが、それぞれ印象的であった内容を記載しておきます。
① 自治体議会を、居心地は悪いが、ローカルな情報環境・コミュニケーションの場に
地方議会の位置づけについては、日本国憲法や地方自治法によって定められており、
議事機関として設置され、首長及びその議会の議員は、住民が直接これを選挙し、首長も議会も自治体の代表機関としては対等で、相対的に独自の存在であるとされています。
地方議会の役割としては「市民意思を施策に反映させる」「市民意思踏まえて政策を立案する」「強大な権限を持っている市長の行政が、公正で効率的、かつ真に市民福祉のためになっているかどうか監視、チェックする」等が言われています。
これらは、位置づけ・役割の土台として一般的に言われる文言でありますが、今回の廣瀬氏のお話はそれを踏まえた上で、日常における議会の存在意義を、グッとリアルに示されていました。
現在のネット社会では、これまでの紙媒体での情報収集と違い、情報一覧をクリックする場面が多くなっている。その結果、関心のある記事だけをクリックするため、好きな情報をより多く取得する環境にある。
さらに、私自身も感じていることですが、関心のある内容をネット検索すると、次から次へと関連の情報が流れてくる、いわゆるエコーチェンバー現象に陥りやすい環境にあると危惧もされています。
そんな環境の中で、地方議会は、自分が好まない情報を耳にできる場であり、好きなものも嫌いなものも混在している珍しい空間であると。また、ローカルな(時にマニアックな)地域情報を得られる数少ない場であるとのお話は大変興味深かったです。
武蔵野市議は26名おりますが、それぞれが様々な背景や価値観をもった市民代表であり、1つの事案に対する見方や意見は本当に様々であるということは、この13年間で思い知らされたことであります。
それまでは、いかに自分と似た価値観や背景をもった方とばかり接してきたかということにも気付かされたのであります。
廣瀬氏のお話では、日常ではそれが普通で、社会には似たような価値観や嗜好で構成された居心地のよいコミュニティーが多々存在していると。
つまり、地方議会をウォッチすることは、居心地が悪いけれど、日常では触れられない情報や価値観を得られる数少ない機会であるとのお話に、自身の経験からも、妙に納得し腑に落ちてしまったのでした。
是非、ローカル情報を得る場として、また時には、違った価値観という刺激を得る機会として、市議会をウォッチいただければと思っています。
② 2020年1月から始まった東京都での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行から4年、今がポストコロナの振り返りをする最後の時期である。
・世論は忘れつつあるかもしれないが、4年間のコロナ禍の経験を振り返って改善すべき点をただす最後の機会である。
・オンライン議会の検討はフェードアウトでいいのか?
「議決権」という自治体にとって非常に重要な権限を、「軽々にオンライン等ですべきではない?」「重要であるから、非常時でも必ずできなければならない?」
・コロナ禍は一定の収束を感じさせているが、新型感染症のパンデミックは必ず再び起こる。SARSなどの感染症が起こる可能性もある。危機的な状況にあっても、議会という機関の機能継続のための「議会版BCP」を作成するべき。
感想・意見⇒
議会版BCPについては現在、議会運営委員会の議会改革で取り組んでいます。
議決権に関しては、議案の内容次第の場面もあるかもしれませんが、「非常時であっても、非常時であるからこそ、議決はできなければならない」と思います。
余談でありますが、この考え方は、コロナ禍を経て問題提起してきた、オンライン授業についても同様のことが言えるのではないかと思っています。
「教育を受けるという権利を、非常時でも必ず受けられる」体制は必要ではないかと。
③ アウトリーチ型の議会、情報発信を
・市長の下には多数の職員がおり、多様な事務分掌を踏まえた「現実とのすり合わせ役」が補佐している。それに対し、議員は当事者(市民)、多様な専門家との対話を武器にすべき。
・そのため、「開かれた議会」は正しい方向だが、ただ扉を開いても誰も入ってこないかもしれない・・・(悲 これからはアウトリーチ型の議会が必要。
感想・意見⇒
委員会等では「市民が支援を求めることを待つのではなく、市の職員が出向いて必要な支援を把握する、アウトリーチ型の支援を!」というように、「アウトリーチ」という言葉を最近特に耳にしますが、アウトリーチ型は議会でも必要とされているのですね。
取り組みとして、2022年11月に初めて、市民と議会との意見交換会が開催されました。
本年も開催を予定しています。

以上、今回の勉強会の全てではありませんが、印象的であった部分と感想を述べました。
議会の存在意義の土台は変わりませんが、具体的な取り組みに関しては、時代や社会情勢に応じて更新していくとうことは、民間も行政も議会も同じですね。
「今回の講演を念頭に置きながら、今後の議会活動を」という想いとなり、備忘録を兼ねて長々と書きました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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